2014年7月24日木曜日

平成26年刑事系第1問(刑法)

速報ベースでの雑感と構成例をお示しします。

これくらいの構成であれば「一応の水準」は割らないだろうという趣旨です。

最適解ではないということを前提に,ご参照あれ。


なお,転載する場合は一言お断りを。商業利用は勘弁してください。




【雑感】

今年の刑事系は「当たり前六法」をマスターしておけば(訴因以外)対応可能,「ハコ思考」をマスターしておけばすべて対応可能でした。
分量的に例年通り,8枚書きたくなる問題だったので,途中答案阻止のため,思考過程の定型化というハコ思考と親和性が高かったのではないかと思っています。






1 刑法編 行為の切り出しと犯罪体系の理解

【思考過程】

・甲・乙・丙の罪責であること,甲丙・乙にグループ分けできること

・それぞれにつき犯罪となりそうな行為を抽出

 甲 授乳拒否行為
 丙 授乳拒否を見て見ぬふり
   甲母の来訪阻止    →2つであることを見逃さない
 乙 甲宅への入室行為
   Aの連れ出し行為


・それぞれの行為につき犯罪体系に沿って争点を抽出(構成例参照)
 →刑法は事前に大まかな答案構成が作成できる科目

・時間が詳細に書かれている…瑕疵・数字・法律行為の無条件チェックが役に立つ

・不作為犯を書かせること,それぞれの関わり合い,因果関係の問題など,平成22年刑法(介護疲れ)が参考になる。過去問学習の重要性






<予想>

・「優秀」・「良好」と「一応の水準」を分けるのは丙についての処理

 「一応の水準」を安定してとるためには,甲・乙につきわかりやすく事実を拾ってかけているか




【答案構成例】


第1 甲の罪責【事実を上げてしっかりと記載】

1.Aへの授乳拒否→不作為の殺人罪(199条)?

2.
(1)実行行為
 保障人的地位あり
 作為の容易性・可能性あり
 →実行行為性○

(2)因果関係
 危険の現実化
 →甲の行為の危険がAに現実化したわけではない

(10月4日追記→十中八九,という規範については,本件の危険が現実化すると判断された後に検討すべき部分なので本件では出てこないのではないか?と考えています・見解変更の可能性あり)

  因果関係は認められない

(3)中止犯の成否
着手(授乳拒否)あり
中止犯? → それぞれの論拠
病院に連れて行っておらず真摯な努力なし
 →認められない

3.よって,Aに対する殺人未遂罪(199条・203条)成立

4.なお,殺意がある以上,保護責任者不保護(218条)には当たらない


第2 丙の罪責

1.甲の授乳拒否を見て見ぬふり

(1)甲との共同正犯は?
  →意思連絡なし,成立しない

(2)単独の不作為犯?
  →保障人的地位に疑義,成立しない

(3)甲の幇助
  →片面的幇助,物理的にも心理的にも因果性なし,認められない

2.母の来訪阻止<作為・不作為にこだわりすぎると時間不足に>

(1)甲との共同正犯?
自らの犯罪として実行しようとしていない,×

(2)単独犯?
 自らの犯罪として実行しようとしていない,×

(3)甲の幇助
 甲によるA殺害を物理的に容易にしている
 →甲のAに対する殺人未遂(199条・203条)の幇助(621項)


第3 乙の罪責

1.甲丙が住む家に侵入した行為
  →管理権説・・・住居侵入罪(130条前段)構成要件該当性あり

2.Aを連れ出した行為
  →未成年者略取罪(224条前段)構成要件該当性あり
   親権者による連れ去り・・・関係ない

3.正当防衛の成否
 「急迫不正の侵害」あり
「防衛の意思」なし・・・Aの様子がおかしいことに気づいたのは外に出てから
  → 違法性阻却事由なし

4.結論

  住居侵入罪,未成年者略取罪成立,併合罪(通例的に手段結果の関係にない)




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