2012年6月7日木曜日

2012民事系第1問(再現)

択一発表日。大丈夫かとは思いますがドキドキします。

ゆるゆる再現していますが,残すはあと2つ。再現をアップしたところ,閲覧者が飛躍的に増えているので少し驚いています。このブログを見た人が合格していることを祈っています。

それでは,民法。



1(1)について

(1)FABの売買契約(民法(以下略)555条)に基づく本件土地の所有権取得をEに主張したい。当該請求が認められるか。

(2)所有権の移転は意思表示によって行われる(176条)が,第三者対抗要件として登記が求められる(177条)。177条の趣旨は登記の存在を信じ取引に入った第三者の取引安全の保護である。このことから,登記には権利関係の公示の効力があるといえる。一方,無権利者が単に登記をしているだけで真の権利者が権利を失うとまでしてしまうと,真の権利者の静的安全の保護に欠ける。よって,登記には公信力まではない。

(3)本件では,甲土地はCが所有していた。19854月にCが死亡した後,甲土地は相続財産であり,DEがそれぞれ1/2の割合で相続した(882条・8871項・896条・9001[k2] )。Dの子Bは,19887月にDが死亡した時点でDの有する甲の持分を相続した。したがって,Bが甲につき持分を有しているのは1/2に限り,Eの持分1/2については無権利者である。よってABの売買によって所有権が移転するのは1/2に限られる。これは,甲土地の所有権登記がAの単独所有となったとしても同様である。[k3] 

(4)よって,Aの相続人であるFEに対して甲土地全ての所有権が事故にあることは主張できず,1/2につき主張できるに過ぎない。


(1)取得時効(1621項)を主張するための請求原因は(あ)ある時点での占有,(い)(あ)の時点から20年後の占有,(う)援用の意思表示(145条)である。

(2)1621項に明示されている要件のうち,「所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と」という部分については1861項により推定されるので請求原因段階で立証する必要がない。「他人の物」という部分については通例的に主張されるのが他人の者であるということから例示されているだけであり,自己物の時効取得を主張することも許される。

 「占有者の承継人は…自己の占有に前の占有者の占有を併せて主張することができる」(1871項)ので,前占有者の占有も合わせ主張することができるといえる。[k5] 占有権も相続財産となるので,(896条)相続による占有取得を主張するためには,(え)(あ)の代わりに,前占有者の占有取得,(お)前占有者の死亡,(か)占有者が前占有者の相続人であることが請求原因事実となる。

(3)本件で事実3の下線部分は,AB間での甲土地の売買合意である。売買契約は意思表示によって成立するので,当該事実によりAB間で19901115日に所有権が移転したことを主張しうる。よって,20年後の20101115日以降にFが占有していたことを立証し,時効を援用すれば請求原因の立証が可能となる。

 よって,事実3の下線部分はある時点での占有を立証する上で法律上の意義を有する。

(4)[k6] 意義の内容としては,FEに対し取得時効により甲土地の所有権を取得したと主張する際に請求原因として必要な(い)(う)(え)(お)(か)のうち[k7] (え)を立証するための重要な間接事実としての意義と,(い)としてどの時点以降の占有を立証すべきかという点を確定するという意義を有する。

設問2

1 GHに対する請求が認められるか。請求の根拠は寄託契約(657条)に基づく「和風だし」1000箱の返還請求権(662条)である。本件では和風だし2000箱のうち1000箱が盗難にあっているので返還義務が履行不能となっているので,返還請求は認められないというHの反論が考えられるが,当該反論が認められるか,検討する。

2(1)寄託契約は「保管をすることを約してある物を受け取る」(657条)ことによって成立する。もっとも,返還請求ができる(662条)ことからもわかるように,受託者の義務としては寄託物を受け取り保存することだけではなく,寄託物を返還するという点も含まれるとすべきである。

 したがって,原則として寄託者であるGは受託者であるHに対して寄託物である和風だし1000箱の返還請求ができるといえる。

(2)本件では和風だし2000箱のうち1000箱が盗難により滅失している。Gは保管料を払っており,善管注意義務を負う(寄託契約書[k8] 22項,5条)。本件で和風だしが盗取されたのはHがだしの保管場所である丙建物の施錠を忘れたからであり,善管注意義務に反することは明らかである。従って,Hは寄託物たる和風だしの滅失につき責任を負うといえる。

 もっとも,損害賠償責任(415条)を負うことは格別,1000箱残っているからと言ってGの請求にすべて応じてしまえば他の寄託者であるFが一切返還を受けられないこととなる。そして,寄託契約は寄託物が必要になる時まで寄託物を保管させることを主眼とする契約であり,返還請求につき早い者勝ちを許してしまえば,寄託契約の本質を害する[k9] こととなる。

従って,同一目的物につき数人が寄託契約を締結している場合に目的物が一部滅失した場合は,まずは契約書に従い,契約書に規定されていない場合は例外的に持分を按分した部分にのみ返還請求権を行使できる(256[k10] )。

(3)本件では,返還請求を行っているGは「混合保管」につき承諾している(寄託契約書31項)。そして,契約書4条によれば,寄託物の数量の割合に応じ寄託物の共有持分権を有することとなっている。Gの持分は2000箱のうち1000箱であった。

(4)以上より,Gの持分は1/2であり,1000箱が残っている本件では引渡し請求は500箱についてのみ認められる。

3 なお,残り500箱分については損害賠償が認められる。当該結論によってGFの間の公平は保たれるといえる。[k11] 

設問3

1 請求の可否

(1)FHに対する損害賠償請求が可能か。当該請求は「山菜おこわ」についての寄託契約の債務不履行に基づき行われている(415条)。以下,債務不履行に基づく損害賠償請求の成否について検討する。

(2)債務不履行に基づく損害賠償請求の要件は①「債務者の責めに帰すべき事由」(過失),②「履行をすることができなくなった」(履行不能)③「よって」(①②の因果関係)である。

(3)本件では,HF間で山菜おこわを丙建物に無償で保管する合意が存在する。Hは商人でないので商事寄託に関する規定(商法593条)は適用されず,山菜おこわの保管について「自己の財産に対するのと同一の注意」(659条)で足る。そして,寄託契約の当然の前提として寄託物を返還する必要があるので,返還義務が存在する。もっとも,500箱ものおこわを自宅以外の倉庫に保管する場合,自己物であっても社会通念上施錠して保管[k12] するといえる。従って,丙建物の施錠を忘れおこわ500箱を盗取され,Fに返還できなくなったことにつき①Hに過失があるといえる。

 おこわはFが製造した者であり,他所から調達することができないので,Hは返還義務を②「履行をすることができなくなった」(履行不能)。

 そして,窃盗に③よっておこわがなくなって返還できなくなっているので,因果関係も存在する。

(4)以上より,FHに対する「山菜おこわ」についての寄託契約の債務不履行に基づく損害賠償請求は認められる。

2 損害賠償の範囲

(1)では損害賠償請求はどの範囲で認められるか。FQ百貨店の全店舗でおこわを取り扱ってもらえなかったことにつき損害賠償請求することができるか。損害賠償の範囲が問題となる。

(2)損害賠償の範囲は,416条に規定されている。損害賠償は原則[k13] として「通常生ずべき損害」の範囲内で請求可能である。(4161項)損害賠償請求が可能である趣旨は損害を債務不履行のあるものに負担させることによって請求者が被った損害を補てんする点にある。したがって,「通常生ずべき損害」とは,債務不履行と相当因果関係の範囲内にある損害をいう。

 そして,「事情を予見し、又は予見することができたとき」(4162項)は例外的に特別事情であったとしても「通常生ずべき損害」の考慮事情に含まれる。相手方が予見できた以上,当該事情を相当因果関係の範囲内に含んでも不公平とはならないからである。

(3)本件においては,Fが保管したおこわについてどのように取引するかという点は特別事情にあたるといえ,原則としては相当因果関係判断の上での考慮事情に当たらない。もっとも,本件では平成22122日,FHに対してQの食品売り場におこわを置いてもらえるようになった,評判が良ければQに全国の店舗で山菜おこわを置いてもらえるチャンスがある旨を伝えている。従って,HFQにおこわを引き渡すことを知っており,「予見」していたといえるので,当該事情も相当因果関係の考慮事情に含まれる。

 そして,本件でFがおこわを引き渡すことができなくなったことにより,QFの商品管理体制に不安を持ち,FQ間の交渉を打ち切る旨Fに通知している。Qに商品を置いてもらえなくなったのは最初の500箱を引き渡すことができなかったからであり,500箱を引き渡せなかったのはHが寄託物を返還できなくなったからである。滅失段階では未だQの全店舗でおこわを扱う旨確定していたわけではないが,Qとの交渉を行うチャンスが与えられれば全店で扱われる可能性があり,その機会さえ与えられなかったのはHに原因がある[k14] 

 以上より,Hの寄託物返還義務の不履行と,QF間の交渉打ち切りには相当因果関係があり,打ち切りにより生じた損害は通常生ずべき損害といえる。

(4)以上より,FHに対しQ百貨店の全店舗で山菜おこわを取り扱ってもらえなくなったことについての損害賠償を請求することができる。



*感想

設問1は全体的にもう少し丁寧に書けたと感じている。

設問2はこんなもの。わからないなりに書いた。

設問3に時間を残し,きっちり書ききるという作戦はおそらく成功した。範囲についての結論に説得力があるか微妙だが,そこ以外はこんなもの。

去年(おそらく45点くらい)よりかけたと思うので,55点を期待。






 [k1]5.6



 [k2]本試験ではもう少し丁寧に条文を置いた。共有の話もしたはずだが,どこで書いたか覚えていない。



 [k3]あてはめ部分ではもう少し三段論法を意識できているはず



 [k4]全て請求原因段階の話で終わらせてしまい,自主占有の話に持っていけなかったのは反省点。

もう少し事案に則した設問の入りにした気もする



 [k5]ここでもう一つ何かの話をしているが,構成が残っていないので不明。実際はこの部分で+3~4



 [k6]ここで2



 [k7](え)の立証のための重要な間接事実と,(い)の時期画定としての意義,という結論は明示した。



 [k8]契約書の条項は意識して引いた。



 [k9]ここが設問2でもっとも聞かれている部分だと思った



 [k10]何らかの留保を付けた気もする。256条を使ったのは覚えている



 [k11]ここで3.4



 [k12]返還義務か保管義務かどちらかで統一的に構成したはず。再現では返還義務に統一



 [k13]ここで原則・例外と明記したことは理解不足を露呈したかもしれない



 [k14]ここは結論の妥当性が怪しい。出題趣旨はこの辺にあると思うが,書いている途中にきづき,挿入した記憶がある

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